今回の特別講演は「厳しい指導」も実践し、「大きな結果も残した」という武田先生ならではの実体験を踏まえた数々のお言葉には非常に重みがあり、我々ユース指導者にとって大きな励ましと自信になるものでした。武田先生の専門分野である心理学の研究結果をうまく交えられて、お話を進められていましたが、決して難解にはならず時折してくださる「笑い話」で会場は終始和やかな雰囲気に包まれておりました。
「厳しい指導」=「負の強化」とは怒鳴ったり、怒(いか)ったりするばかりの指導で、武田先生はかつてこの指導で11年間王座から遠ざかっていたチームを10年間に7回の日本一に導かれました。しかし、選手達の間には「怒鳴られるから」一所懸命やるという心理が働き出してしまい、皆びくびくして、チームの雰囲気は暗く、先生がいないと練習をサボるという状況になってしまったとのことです。 ここで武田先生は「ダメな所を怒鳴って指摘する」=「悪いプレーは減らそう」という負のアプローチから「良いところを褒めて指摘する」=「良いプレーを増やそう」という正のアプローチに変えていったそうです。
−もちろん悪いところは指摘しなければなりませし、叱らないといけません。怒鳴るのではなく、「どうやって欲しいか」を伝えることが肝要で、ちょっとでも良くなったら進歩をきちんと指摘し、良くなっていなくても努力していたら「努力しているのが分かるよ」「がんばっているね」と伝えてあげるのが大事です。−
※武田先生の配布資料より引用
怒鳴ってばかりだと選手はやる気を失い、ひどい場合はフットボールを嫌いになってしまうなと感じました。
また武田先生はコーチの役割は主に
としており、具体的な指導にあたるときの方法も、行動心理学を応用してご提示してくださいました。
またコーチングにあたる際の注意点として、自身の願望達成を自覚しながらコーチングに臨むことが大事とされ、願望達成とは自分が現役時代に果たせなかったことを選手(子供たち)に重ねて成就させること、させようとすることと説明されておりました。
その他、褒める時(相手にフィードバックする時)の注意点として
の4点を挙げられ、難しいことを指導する時は一連の流れを分解して、ひとつずつ、簡単なことから、ゆっくりとやらせるのが効果的とも示していただきました。
講演を通して武田先生は、表面上はユースフットボールの具体的なお話はほとんどされず、実際されてきたコーチングの体験談に基づいていらっしゃいましたが、すべてユースフットボールの指導に通じるものがあり、(“基礎”ですので当然のことなのかも知れませんが、)技術だけでなく、コーチングにおいてもファンダメンタルの重要性をあらためて感じることができました。
先日出席させていただいたJAFAの指導者講習会の講義とも重なる箇所が多々あり、この講演会で再確認することができ、とても良かったです。
私も皆様同様まだまだ日本のフットボール界ではきちんとした指導がなされているところは少ないと思っており、将来のためきちんとしたコーチング(フットボールだけでなくひとりの人間としても)ができるよう、これからも経験を積んで参ります。
この武田先生の講演会でも、今まで自分が大学の後輩や子供たちに指導してきた方法が間違っていなかったと確認できる機会になり、大変有意義な経験をさせていただきました。
最後になりましたが、貴重なお時間を割いてこのような講演会を引き受けてくださった武田建先生を始め、講演会開催にご尽力くださいました関西学院のOBの皆様に深く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
チェスナットリーグ本部
報告者 河田 基
チェスナットリーグ本部
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