今年で6回目を迎えた今回のチェスナットリーグ・スポーツアカデミーは『フットボールのコーチが一番面白い!?〜オフェンス戦術を中心に〜』というテーマを関西学院大学ファィターズで永くコーチをされており、現在ディレクターとして活躍されております、小野 宏 氏に講師をお願い致しました。小野氏は朝日新聞のご勤務されていた時代から現在までコーチとしてゲームの戦略を立てられるのは日本のトップコーチと言っても過言ではないでしょう。数々の試合を勝利に結び付けて来られましたゲームプランを判りやすく、チェスナットリーグのコーチ・関係者に講演をして頂きました。今回は52名の方が参加して頂き、大変興味深くわかりやすいお話を頂きました。 今回の講話は小野コーチが現役選手の頃(1970年代)から遡り、現代のアメリカンフットボールにおけるオフェンスの戦略・戦術について、各年代の映像を紹介しながらお話しを頂きました。
◆プレーデザインの競争
1970年代。当時のオフェンスラインアサイメントは一人が一人をピックアップする方法が主流でした。関西学院大学はこの頃まで常勝集団として何十連勝も積上げてきていたそうです。しかし、70年代後半に入る京都大学はディフェンスの動きによって、プレー選択を変更するトリプルオプションをいち早く取入れ、京都大学は関西学院大学の連勝をストップさせるきっかけとなったそうです。またOption攻撃は様々な展開が可能でトリプルオプションを軸に多彩な攻撃パターンを持ち、ディフェンスのキープレーヤーを翻弄させたようです。
1980年代には日本大学のショットガン攻撃、明治大学のウイングT Optionなど関東のチームが阿吽の呼吸とスピードを武器にオフェンスを展開していきました。
この頃、関西学院大学は日本大学のショットガンのような超パッシングアタックではなく、ショットガン体形からのオプションやゾーンブロックを取り入れた攻撃を展開するようになりました。またこの頃からカウンタープレーも多く展開され、ゾーンプレーとカウンタープレーの組み合わせは非常に有効的だったそうです。特にゾーンブロックのスキームは現在のオフェンスに通じる部分が非常に多く含まれているそうです。
1990年代に入ると再びオプションプレーが多く展開されることになったそうです。
その代名詞は法政大学のフリーズオプション、京都大学のフレックスボーンがその代表となります。当時、日本大学が圧倒的な強さを誇る中で法政大学はでフリーズオプションを展開し、関東リーグを制しました。法政大学のフリーズオプションは早い中央プレーと抜群のタイミングで繰り出されるオープンプレーで、セカンダリーの判断ミスを誘発し、一気にビッグゲインに繋げる脅威があったようです。
また、京都大学のフレックスボーンはディフェンスのアジャストエラーを誘発し、数的優位な状況を、常に作りだして展開する京都大学らしい理系的オフェンスで一時代を築かれたそうです。
2000年代に入ると立命館大学がゾーンプレーとオプションプレーを組み合わせたゾーンリードをいち早く導入。さらにゾーンリードを軸にした多彩な攻撃展開見せ、圧倒的な強さを見せたそうです。このゾーンリードは現代では世界中のほとんどのチームが採用した中で、最後まで導入しなかったのはNFLだそうです。それほどゾーンリードはQBにかかる負担とリスクが大きかった為ということでした。
◆関西学院大学のラン&シュート オフェンス
2000年代に入り、関西学院大学はショットガン体形からのラン&シュートを導入。
対戦相手のディフェンス体形の変化に応じて、レシーバーにルートを選択させ、さらにディフェンスの動きを見ながらQBが投げ分けていくオフェンスをされていたそうです。
◆2014甲子園ボウル KGオフェンスの構造
2014年甲子園ボウルにおける関西学院大学のインサイドパワーパッケージについてお話しを頂けました。大変シンプルなプレーアサイメントになっているが、同じアクションからいろいろなプレーに展開することで、ディフェンスに的を絞らせない展開となっており、日本大学のディフェンスを翻弄されたそうです。攻撃パターンは同じ動きから幾つもの展開があり、結果的に大量得点を生む結果となったそうです。
関西学院大学の戦術は1970年代のオプション展開に始まり、現代のパワーインサイドランに至るまでに、様々な展開と時代を風靡したオフェンスを見事にアレンジしてここまで来られていると感心致しました。質疑応答でも数名のチェスナットコーチから質問もあり、大変貴重な講演となりました。また最後にはOverCoachしすぎないようにというメッセージも頂き、フットボールの醍醐味である「考えること」を子供達から奪わないというメッセージを頂きました。 最後に講演を快くお引き受けして頂きました小野 宏コーチや会場のご協力を頂きました関西学院大学の皆様にはこの場を借りて、御礼申し上げます。
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