今年で7回目を迎えた今回のチェスナットリーグ・スポーツアカデミーは『スポーツ選手のモチベーション〜チェスナットリーグの子供達のやる気を引き出す方法〜』というテーマを全日本女子バレーボールチームのメンタルトレーナーで龍谷大学 理工学部スポーツ心理学博士の渡辺 英児先生に講師をお願い致しました。
渡辺先生はご自身もバレーボールチームの監督を務められていたこともあり、2009年に全日本女子バレーボール監督の真鍋 政義さんとつながり、同チームのメンタルトレーナーに就任されました。
当時の日本代表は誰もメダルを獲得した事のない状況で、メダリストとそれ以外の違いを研究され、オリンピックで勝つ選手のメンタルの作りに大きく貢献されました。今回はチェスナットリーグのコーチ・関係者 約50名にご講演をして頂きましたので、ご講演頂きました内容をご紹介させて頂きます。
◆スポーツ参加理由とコーチングの重要性
私たちが指導を行っている12才前後はスポーツへの参加率が最も高く、また彼らはこの頃に自尊心や社会的発達が形成され、スポーツ経験が生涯にわたる性格形成に影響するというお話がありました。私たちが求められるコーチングとは選手が求めている事とコーチが伝えたい事が一致していることが重要であり、コーチが様々な意思決定を行うことで選手のやる気を引き出す事に繋がるということでした。コーチは勝つ事を強調しすぎるとエゴになり、選手は続ける事を辞めてしまうことがあります。楽しみや技術向上のサポートをすることで子供達自身からやる気を引き出す事が大切になるということでした。
◆なぜスポーツを辞めてしまうのか?
(ドロップアウトを防ぐ)
子供達がスポーツに参加する理由と辞める理由は右記のような理由が挙げられます。
ドロップアウトする要因は他のスポーツをしたいのではなく、チーム内のマイナス要因が多く、理由を考えるとコーチのアプローチ次第でドロップアウトを未然に防ぐ事ができるそうです。子供達に能力向上や達成感を感じさせることで続けさせることができるということでした。
また動機付けには内発的動機付けと外発的動機付けがあります。内発的動機付けとは、自己決定度合の高いもので、この意思が高い選手は絶対にプレーを辞めることがないと言われています。
反対に外発的動機付けとは自身が自己決定したものではなく、別の要素によって取り入れられた動機の為、プログラムを進めていくうちに内発的動機付けに向けていく事が大切ということでした。
◆スポーツ参加の動機付けの相互作用
スポーツ参加者の動機つけは2つの要因の相互作用で成り立っているということでした。
参加者の動機付けは本人の自己決定によるものですが、環境の要因については変えていく事が出来ます。
特に指導者については大きく左右するケースがあり、例えば選手にやる気を感じないと感じた時には「あいつがやる気がない!」と決めてしまうコーチがいるが、やる気を引き出せないコーチにも要因があることを理解しなければいけないとお話しがありました。明確な意思決定や練習方法、練習環境に変化を与える事で選手の動機付けに影響を与えることが出来るということでした。
またメンタルの強い選手とは?という質問があり、その答えは「与えられた環境の中で最高の選択肢を常に意思決定できる人」ということでした。それは日々のイメージトレーニングやぶれない意思決定をしていくことで、培われていくものということでした。
◆内発的動機付けを向上させる方法
内発的動機付けの構成要素は以下の3つになります。
@知ろうとする⇒ ライバルチームの情報を提供することで、必要なスキルを習得させる
A達成感⇒ 細かな技術統計を公表し、技術成功する達成感を与える
B刺激を体験⇒ 喜ぶ感覚を経験するための活動に没頭する感覚を体験させる(フロー状態)
例えば、選手の内発的動機付けを刺激する為には、技術レベルと課題レベルを比例させる必要があり、そのバランスが崩れると選手は物足りなさを感じることになるそうです。
また罰を与えたりすることについては、コーチが100の行動を見たときに50%は見逃し、45%は説得指示を行う。5%程度は罰を与えるなどしても効果的ということでした。
◆内発的動機付けを向上させるコーチングポイント!
●成功体験を供給する
●良いパフォーマンスのあとすぐにジェスチャーや言葉で伝えてあげる
●単調な練習を行わない ⇒ 様々な要素を練習に組み込んで
●参加者に決定権を与える ⇒時には選手にメニューを選択させる。
●現実的な目標設定を行う
最後に講演を快くお引き受けして頂きました渡辺 英児先生や会場のご協力を頂きました関西学院大学の皆様にはこの場を借りて、御礼申し上げます。
チェスナットリーグ本部
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